インド人と契約をする場合のリスク~インド進出成功術(2)

インド進出企業の守護神、経験30年の国際弁護士原口です。

 

今日はインド人と契約をする場合、

あなたの会社にとって重要なことはすべて契約に明記をしておかないと、

後で泣くことになるリスクについてお話をします。

はじめに

 

インド人は親日でしょうか。

 

答えはイエスです。

 

インドが英国から独立することを、当時英国と敵対していた日本が助けたことなどから、

インド人はとても親日的です。

それでは、インド人と取引をする場合、口約束または、

日本式の数枚の契約書を作成すれば足りるのでしょうか。

 

答えは否です。

 

日本式の口約束や数枚の契約書を作成するだけで、あとはお互いの信頼で、

という考えはインドでは通用しません。

重要な口約束は全て無視され、あなたの会社が後で泣きを見ることになります。

 

 

インド人の契約についての考え方

 

第一日目でも述べたように、インドは1947年に独立するまで89年間もイギリスの植民地でした。

その間に英国の法律制度の影響を強く受けています。

とくに契約についての考え方は、契約社会である英国の影響を強く受けており、

インドにおけるすべてのビジネスは契約に基づいて行われます。

インド人は、相手方に守ってもらいたいことは全て契約に書き込みます。

 

逆に言えば、相手方が契約に書き込むことを要求しない事柄は、たとえどんな口約束でも、

実際には守る必要がないことだと考えます。

例えば、あなたの会社が、インドの会社との間でどんなに口約束をしたとしても、

その口約束を契約書に明確に記載をしないと、インド人からは無視されてしまいます。

 

 

具体例

 

売買代金の支払い遅延対策

インド企業と取引をする場合、売買代金の回収は本当に大変です。

相手方が中小企業の場合、いろいろな理由をつけて、

売買代金の支払い期限を延ばそうとします。

にもかかわらず、あなたの会社に対しては約束通り、

商品の出荷を求めてくることが少なくありません。

 

日本であれば、このような場合、あなたの会社の方でも、

前に出荷した商品の代金を支払うまでは、

その後の商品の出荷を拒むことができます。

しかし、インドの場合、そのことを明記しなければ、

あなたの会社だけが商品の出荷を求められることになります。

そして、商品の出荷を拒むと、裁判が起きて、20年以上も裁判に巻き込まれ、

時間と費用を失うことになります。

 

このようなことを避けるためには、必ず契約書に、

相手が一回でも代金を支払わない場合には

あなたの会社もそれ以降の商品の出荷を中止することができるということを

明確に記載する必要があります。

ここまで明記すれば、インド人でも時間稼ぎのためだけに、

裁判を起こすことは控えます。

それだけではなく、後の製品が出荷されないと、その後の経営が苦しくなる場合には、

あなたの会社の商品の代金を支払ってくる可能性も高くなります。

 

 

不誠実な相手方との取引の中止策

 

日本では、以上のような不誠実な取引の相手方は、

お互いの信頼関係がなくなったとして、

契約を解除することが可能です。

しかし、インドでは契約上、契約の期限が定められた場合、

その期間内に契約を解除することはできません。

相手方が不誠実であることがはっきりした場合であって、契約期間が10年間であれば、

10年間の間その相手方と取引をすることになるのです。

 

このようにあなたの会社が泣きを見ることを避けるためには、相手方の会社が不誠実、

例えば、商品の売買代金を期限までに支払わないことが、

2度以上続けてあった場合には、

あなたの会社は契約を解除できるという条項を、

インド人との契約の中に明記しておく必要があります。

 

 

(3)インド人の親日さと契約交渉は別物

 

以上のように、インド人と取引をする場合には、

契約の中にあなたの会社が重要と考えることは全て、

明確に記載をする必要があります。

しかし、インド人はあなたの主張を簡単には受け入れません。

いろいろな屁理屈をつけて、あなたが重要だと思うことを契約にいれることを拒んだり、

あなたの主張に対する例外を契約書の中にいれることを主張します。

 

例えば、インド人が契約に基づいて、

売買代金100万円を3月31日に支払うことになっていたとします。

 

そして100万円がインドの通貨であるルピーで、60万ルピーだったとします。

インド人はこの場合、3月31日の時点で100万円が60万ルピー以上になった場合には、

60万ルピーになるまでは支払いを拒絶することができる、などと主張してきます。

為替リスクを全てあなたの会社に押し付けようというのです。

 

このようなインド人の主張は、インド人が親日であることとは無関係なのです。

インドは英国流の契約社会であり、契約の交渉にあたって、

自分の利益になることを全て主張することはインド人にとっては当たり前のことなのです。

 

最後に

 

インド人は親日です。

 

しかし、インドは契約社会であり、契約を締結する場合には、あなたの会社が重要と

思われることは全て契約にもれなく、明らかに記載をする必要があります。

万が一、口約束にとどまる場合、

その口約束は無視されるといっても過言ではありません。

また、インド人との契約交渉は厳しいものになります。

 

これはインド人が親日であることと何ら矛盾するものではありません。

契約社会では当たり前のことで、当たり前のことを当たり前に主張しなければ、

あなたの会社はインドでは泣きを見ることになります。

日本流の口約束や数枚の契約書を作成するだけで、

インド人を相手に取引を開始することは危険極まりません。

 

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